診療内容
形成外科では、体の表面に関するあらゆる問題を解決することを目標とします
先天異常疾患
口唇裂、口蓋裂
約250-500人に一人の割合で発症する、比較的頻度の高い疾患です。ただ口唇を縫い合わせたり、口蓋(上あご)を縫い合わせたりするのではなく、整容的(見た目)、機能的によくなっていただくためには高度な技術を必要とします。 当科では、お子様の出生後から(場合によっては出生前から)滋賀医科大学医学部附属病院母子診療科、小児科、耳鼻科、口腔外科と連携して治療を行います。 当科で行う一般的な治療の流れとしては、以下のようになります。

口唇裂・口蓋裂・顎裂
くちびる(口唇裂)の手術:生後3か月ころに手術を行っています。唇の割れ方もさまざまです。状況に応じた治療計画を立て、美容的観点から、できる限り左右対称な唇の形態を目指した手術を行います。抜糸は4日から7日で行います。上あご(口蓋裂)の手術:1歳半ころに手術を行います。割れている口蓋を手術によって閉鎖し、食事や発語の障害が出ないようにします。発語に関しては手術だけでなく言語訓練も重要であり、適切な時期に当院の言語聴覚士による言語訓練をお勧めしています。上あご(顎裂)の手術:矯正歯科と蜜な連携をとり、適切な時期(およそ小学生のころ)に手術を行っています。上あごの骨の欠損したところに腰の骨を移植する手術です。手術により歯の矯正が可能になります。唇顎口蓋裂では歯や耳の疾患を併発することがあります。滋賀医科大学医学部附属病院の口腔外科や耳鼻科と連携し、総合的に治療にあたります。
唇顎口蓋裂は生まれた時から大人になるまで長期間に渡り治療が必要になることがあります。ずっと同じ病院での治療が継続できないこともあります。転居などにより治療が中断された方も遠慮なく当科にご相談ください。
手術前

くちびるの手術直後

小学校低学年時

かかりつけの産科で口唇裂・口蓋裂と診断されている胎児のご家族に対して、出生前カウンセリング(水・木曜日の午前)を行っております。希望される際は、かかりつけの産科より、当院患者支援センターで予約をお取り下さい。
手足の先天異常
生まれつき手足が変形していたり、うまく動かなかったりする赤ちゃんがいます。手の指(親指が多いです)や足の指が5本以上みられたり、隣の指と癒合しているような状態です。指の運動に必要な筋肉を再建したり、指間部(指の「また」のことです)をきちんと再建したり、専門的技術が必要とされる手術が必要となります。滋賀医科大学形成外科には手外科専門医が常勤で在籍していますので安心して治療を受けていただます。また、指が短い、中足骨短縮症、中手骨短縮症という病気がありますが、それにはメスで皮膚を切らない独自の方法を行い、整容面にさらに配慮した治療を行っています。詳しくはこちら →https://www.shiga-med.ac.jp/hospital/doc/department/department/plastic_sgr/files/2652.pdf
外耳の先天異常
小耳症(生まれつき耳がほとんどない場合から、正常の耳の半分くらいある場合まで、色々です)や埋没耳(頭の方に耳の一部が埋まっている)、折れ耳、立ち耳、副耳(本来の耳以外に、小さい耳のようなものがある)、など様々です。すべて当科にて対応しておりますので、ご心配なご両親の方はお気軽に受診してください。
耳の変形は軽度のものであれば、スポンジやテーピングを用いて矯正することが可能です。できる限り早く矯正を開始したほうが良いので、生後まもなくでも、気づかれた時点で早めに受診してください。
皮膚および軟部組織損傷(外傷)
交通事故や転倒、あるいは薬品、動物によって切りきず(切創)、すりきず(擦過傷)、裂けたきず(挫創)、刺しきず(刺創)、咬みきず(咬傷)ができることがあります。これらの傷は、将来傷跡で悩まないためにも、初期の治療が大変大切です。当科ではなるべく傷跡が残らずかつトラブルなく治癒するよう、最大の注意を払って処置を行います。
やけど(熱傷)
やけどは皮膚が高温な媒体(熱湯やヒーター等、湯気でも起こります)に接触したことによって起こります。皮膚にどの程度の深さまで熱が到達して組織がダメージを受けたかにより、I度、II度(さらに浅いものと深いものに分けられます)、III度に分類されています。 I度やII度の浅いやけどは、保存的治療(手術をせずに)にて治りますが、II度の深いやけど、III度のやけどは手術が必要です。また小さいお子様や高齢者の方は浅いやけどであっても、入院加療が必要な場合があります。 最近、問題となっているのが低温やけどです。カイロや湯たんぽ等、熱湯ほど温度が高くない媒体に長時間皮膚が接触することによって受傷します。一般的に治るのに時間がかかり、場合によっては手術が必要なことがあります。
ケロイド、肥厚性瘢痕
お腹の手術や帝王切開の後などで、傷跡が赤く盛り上がってしまうことがあります。痛みやかゆみを伴ったり、そうでなくても夏場で胸の開いたシャツを着ると気になったりします。厳密にはケロイドと肥厚性瘢痕は似て非なる病態です。ケロイドは体質の要因が大きいです。 ケロイドや肥厚性瘢痕は、切除しても再発することがあり、「切らない」ことが常識とされていた時代もありました。当科では、まずステロイドのテープや注射を行い、それでも良くならない場合は手術を行います。盛り上がったきずを切除して、丁寧な縫合を行います。さらに放射線科と連携し、電子線照射を行うことで、再発の可能性を極めて低くしています。電子線照射で、「放射線がん」になった方はこれまで文献上報告されていませんので、ご安心ください。手術計画をした時点で、放射線科も受診していただき、電子線の詳しい話を聞いていただきます。
手術前

手術後(電子線照射あり)

皮膚および皮下、軟部腫瘍
良性腫瘍から悪性腫瘍に対応いたします。画像診断等で、出来るだけ正確に術前評価を行ってから切除します。術前で診断のつかないできものは、病理診断をして、病理組織の専門家(病理診断医)に組織を観察して診断してもらいます。悪性の評価が出た場合は、学会のガイドラインに従って追加切除を行います。
乳がん切除後の再建
乳がん切除後の乳房の再建は、大きく分けて 1)自家組織による再建 2)シリコンによる再建 があります。
1)自家組織による再建
自分の腹部や背中の皮膚や脂肪を用いて、乳房を再建する方法を自家組織再建と呼びます。シリコンによる再建に比べ、より自然な仕上がりとなります。滋賀医科大学形成外科では自家組織再建の中でも、高度な技術を有する遊離組織移植による乳房再建が可能です。
2)シリコンによる再建
シリコンにより乳房を再建する方法です。日本乳房オンコサージェリー学会による認定施設のみに限られますが、当科は乳腺外科とともに認定施設であるため、シリコンによる乳房再建が可能です。自家組織による乳房再建とシリコンによる乳房再建、いずれでも可能な方、いずれかの方が良い方がいらっしゃいます。乳房の形態、体格、年齢、社会的背景など様々観点から選択することとなります。診察時に一緒に相談させていただきます。 いずれの方法においても、美しい乳房を再建することによって乳がんの治療後も明るく人生を送っていだたくために、精一杯お手伝いをさせていただきたいと思っています。
リンパ浮腫
がん等の悪性腫瘍の際にリンパ節を含めて切除してしまうため、リンパ液の流れがうっ滞し、手や足が腫れる病気です。症状が軽い場合は、医療用弾性ストッキング等で対応できますが、ひどくなると感染(蜂窩織炎)になって腫れや痛みを繰り返したりします。昨今、リンパ浮腫でお困りの方に対して、顕微鏡下でリンパ管を静脈と吻合してリンパ液のうっ滞を改善させる手術がされるようになってきました。リンパ浮腫の病態を詳細に調べるためには、リンパシンチグラフィーやインドシアニングリーン(ICG)造影が必要ですが、これらを施行できる施設は国内でも限られています。当科においては、どちらの検査も施行可能であり、詳細に患者さんのリンパの流れを評価することが可能です。その後、手術によって改善可能か診断させていただきます。この手術は非常に繊細な細い手術ですが、当科では対応可能です。
眼瞼下垂
加齢やコンタクトレンズなどが原因でまぶたが下がり、視界が狭くなる病気です。まぶたが重い、見にくい、特に上方の視野がせまいという症状が主なものになります。 さらにまぶたを挙上できないためにおでこの筋肉を使って無理やりあげようとすることに よる眉毛挙上や、首を後ろに倒して見ようとする頸部後屈によって、頭痛や肩こりの原 因となることもあります。また眠たそうな見た目になるため整容面の問題が生じます。 見にくさや視野の改善のため、また頭痛や肩こりの改善を目的として 手術を行います。皮膚だけが下垂している場合には皮膚を切除します。筋肉(眼瞼挙筋)の動きが問題となる場合は、筋肉に操作を加えまぶたが上がりやすくします。
切開部位はまぶたの縁で行いますので、目立ちません。
術前

術後

顔面骨骨折
交通事故や転倒、激しいスポーツ等により、顔面の骨が骨折することがあります。顔面は非常に多くの骨から構成され、比較的狭い領域に骨、神経や血管、筋肉、目や鼻、口等の感覚器が詰まっています。骨折すると、整容的(見た目)に問題が生じたり、さらに口が開けにくくなるなどの機能的な問題が出てきたりします。この場合は、手術により折れた骨を修復し、チタンプレートにて固定することで改善が可能です。
顔面骨骨折後に変形が生じた方も当科では、様々な治療を提案し変形の改善につとめます。特に、鼻骨骨折後の変形(陳旧性鼻骨骨折)に対しては、皮膚切開を行わない経皮的骨切り法という手法を用いて、変形を矯正しています。
術前

術後
